
「ログは取ってますよ」
そう説明されるのですが、実際に設定を確認してみると「初期設定のまま」で、
- 重要な操作が記録されていない
- 記録はあるが、期間が短くてすぐ消えている
- どこに残っているのか分からない
といった状態になっていることがあります。
この状態だと、いざインシデントが起きた時に、
何が起きたか追えない/証拠が残らない「空っぽログ」になってしまいがちです。
「ログの初期設定」がなぜ不十分なのか、そして最低限どこを押さえるべきかを整理します。

ログは「原因究明の元となる記録」
ログは「何があったかを調べるための記録」です。
ところがデフォルト設定のままだと、ログは意外と「薄い」ことがあります。
- 記録対象が限定的(管理者操作・認証・設定変更などが十分に取れていない)
- 保存期間が短い(数日〜数週間で消える)
- 保存先が端末ローカルのみ(端末が暗号化・破壊されると一緒に消える)
サイバー攻撃の調査で必要になるのは、
- いつ、誰が(どのアカウントが)
- どの端末から、どこへ接続し
- どんな操作が行われたか
といった「流れ」です。
ログが薄いと、この流れがつながらず 原因究明も再発防止も「推測」 になってしまいます。
よくある「空っぽログ」
医療機関でよくあるのは、次のような状態です。
- ログは存在するが、初期設定の範囲しか記録していない
- 認証ログが不足(例:失敗ログオンが追えない/どの端末からログオンしたか分からない、など)
- 管理者操作・設定変更の記録が不足(例:アカウント追加、権限変更、監査設定やログ設定の変更が追えない)
- 重要な通信の記録が不足(例:VPN、リモートデスクトップ、管理画面など重要機器への接続履歴が追えない)
- ログの保存期間が短い
- 気付いた時には、侵入時期のログがすでに消えている
- 調査を進めると、発覚時点から半年以上前に侵入の兆候が見つかることも少なくない
- ログが1台1台に散らばっている
- サーバ/端末/ネットワーク機器に分散し、いざという時に集められない
- 暗号化・破壊でログ自体が消える
- ローカル保存だけだと、攻撃の影響を一緒に受ける
結果として、「調べようとしても材料がない」状態になります。
この状態は、対策が弱いというより 「調査も改善もできない状態」 であることが問題です。
難しい仕組みより「まず残す・保つ・集める」
何が完璧か分かりにくいログの世界ですが、次の3つを押さえると「空っぽ」から抜け出せます。
① 何を記録すべきか決める(最低限のセット)
最低限、次の種類は 「追える」 状態にします。
- 認証・ログオン(成功/失敗、どの端末から)
- 管理者操作・設定変更(アカウント作成、権限変更、ポリシー変更など)
- 重要サーバへのアクセス(ファイル共有、バックアップ、仮想基盤等)
- リモートアクセス(VPN、RDP、遠隔保守の接続履歴)
② 保存期間を延ばす(気付いた時には消えてた・・・を防ぐ)
- 最低でも 数か月単位で残せる設計にする
- 「端末の容量不足で上書き」が起きないように、保存先を検討する
目標値は病院規模や体制によりますが、「短すぎる」ことが最大の問題です。

③ ログを別の場所に残す(ローカルだけにしない)
サーバやネットワーク機器のログは、可能な範囲で 別の場所にもコピーして残す ようにします。ログを端末やサーバの中だけに置いていると、暗号化や破壊などの影響で ログも一緒に失われる ことがあります。また、ログは保存領域の容量に限りがあり、初期設定のままだと 容量不足で古いログから上書き・削除 されてしまいがちです。
「いざというときに残っていない」を避けるためにも、ログが消えにくい場所に「もう一つ残しておく」という考え方が現実的です。まずは「VPN機器」や「重要サーバ」など、影響が大きいところから始めるのがおすすめです。また、ログ保管先は、消されにくいように権限を分ける(最小権限にする)ことにも注意しましょう。
※ここでいう「別の場所に残す」は、いきなり高価な仕組みを導入する話ではありません。
まずは、必要なログが一定期間残る状態(記録対象・保存期間・時刻同期)を整えることが目的です。
おまけ:時刻がズレていると、ログが「つながらない」
ログを見返すときは「いつ何が起きたか」を時系列で追います。サーバや端末、VPN機器などで時刻がズレていると、ログ同士の突き合わせができず、原因究明が難しくなります。院内で基準となる時刻(NTP)を決め、全体が同期する仕組みを整えておきましょう。
まとめ
「ログは取っている」と説明されると安心してしまいますが、初期設定のままのログは、いざという時に役に立たないことがあります。
- 記録対象が薄い
- 保存期間が短い
- ローカル保存で消えやすい
- さらに時刻ズレがあると、ログ同士がつながらない
この状態は、原因も証拠も追えない「空っぽログ」につながります。
まずは残す(記録対象)/保つ(保存期間)/集める(集中管理) の3点と、時刻同期の整備から。「調べられる状態」を作ることが、基本的な運用管理であり、インシデント対応と再発防止にも役立つものになります。
参考
厚生労働省:「医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト」
E-Learning 令和7年度コンテンツ
- 経営者・管理層向け
- 医療情報システムのセキュリティ仕様について
- システム・セキュリティ管理者向け
- 医療機器の安全確保について
- 岡山県精神科医療センター ランサムウェア事案調査報告書 読み解き 等

