病院あるある(11) – バックアップ取ってるから大丈夫?

「バックアップは取っているので大丈夫です」
医療機関でもよく聞く言葉です。

バックアップは重要な対策の一つなのですが、ランサムウェア被害などでは、バックアップがあるのに復旧できないケースが起きます。
理由は単純で、「取れているつもり」「戻せるつもり」のまま、確認されていないことがあるからです。
今回は、いわゆる 「取っているだけバックアップ」 の落とし穴を整理します。

バックアップは「ある」だけでは意味がない

バックアップが役立つかどうかは、結局この2点で決まります。

  • 攻撃や障害で一緒に壊れないか(守られているか)
  • 必要な範囲を、必要な時間で戻せるか(使えるか)

ところが現場では、

  • 同じネットワーク上にバックアップ先があり、攻撃の横展開で暗号化される
  • 保存の世代が少なく、気付いた時にはバックアップも汚染済み
  • 復旧手順が曖昧で、復元にどれくらい時間がかかるか分からない
  • そもそもバックアップがエラー等で失敗していたことに気づいていない

という落とし穴が起きがちです。

「バックアップがある」は安心材料になりやすい分、

確認が後回しになり、いざという時になって初めて「穴」が見つかります。

よくある「安心できないバックアップ」

① バックアップが「同じ場所」にある

  • バックアップサーバやNASが院内の同一ネットワークにあり、権限も同じ管理のまま
  • 結果、攻撃者が辿り着けて暗号化される/削除される

② 「取れている前提」で、取れていない

  • ジョブが失敗していても気づかない(LTOテープ装填ミスといった事例も)
  • 成功に見えても、実は対象が抜けている(設定ミス・容量不足など)
  • アラートが来ても、誰も見ていない

③ 復元手順と所要時間が不明

  • 導入時にリストア(復元)テストをしていない
  • 復旧の手順書がなく、担当者の記憶頼み
  • 復元に時間がかかり、診療再開の見通しが立たない

④ 「ベンダーがやってくれるはず」が前提になっている

  • いざインシデント時に頼ったら、「その手順は契約にない」「やったことがない」と判明する
  • 導入時に確認していないため、責任分界が曖昧なまま運用が続く

まず確認すべきは3つ(守る・見える・戻す)

① バックアップが「一緒にやられない」構造か確認する

  • バックアップ先が同一ネットワーク・同一権限で丸見えになっていないか
  • バックアップの削除や暗号化が容易にできない設計か (例:WORM=追記のみ、イミュータブル=変更不可 等)
  • 世代(過去分)が残る運用になっているか

② 日々「取れていること」が分かる状態にする

  • 直近の成功/失敗が誰でも確認できる
  • 失敗時の連絡先(誰が対応するか)が決まっている
  • 容量不足など、止まりやすい要因が監視されている

③ 導入時に「戻せること」を確認し、手順と時間を見積もる

  • 導入時(または見直し時)に バックアップ+リストアの確認を行う
  • 復元の対象範囲(どこまで戻せば診療再開できるか)を決める
  • 復元にかかる時間の目安を出す(現実的な時間の目安=RTO、どこまで戻すか=RPOの感覚)

※ポイントは「復元(リストア)に何時間かかるか」を把握すること。業務復旧はその先です。

RTO (Recovery Time Objective) - 目標復旧時間 許容できるダウンタイム・どれだけ早く戻す必要があるか
RPO (Recovery Point Objective) - 目標復旧時点 どれだけ前のバックアップ(状態)まで戻っても許せるか

まとめ

バックアップは必要ですが、取っているだけでは安心になりません。

  • 同じネットワーク上で一緒に暗号化される
  • 日々取れていないのに気づかない
  • 復元手順や時間が不明で、使えない

こうした「取っているだけバックアップ」の落とし穴は、インシデント発生時に初めて露呈しがちです。
(ベンダー側も実はリストア確認をしたことがない、というケースすら起こり得ます)

そしてもう一つ大事なのは、高額なバックアップ製品を追加購入すれば解決する、とは限らないということです。
まずは今ある仕組みで、

  • 巻き込まれない形になっているか
  • 日々きちんと取れているか
  • どれくらいの時間で戻せるか

を確認し、手順と責任分界を整理することが重要です。

そのうえで必要があれば、段階的に強化すればよい――
最小コストでできる見直しから始めることが、現実的な安心につながります。

参考

厚生労働省:「医療機関向けセキュリティ教育支援ポータルサイト」

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